今さら聞けない「DAO(自律分散組織)」とは?
本レポートでは改めてブロックチェーンコミュニティ上では浸透しているDAO(自律分散組織)という概念について馴染みのある組織との比較や実例を挙げ解説していきます。
執筆時点(2021年6月末時点)でのDeFi(分散型金融)におけるTVL(プラットフォームにロックされているアセットの時価総額)は580億ドル(約6兆4,700億円)にのぼり、暗号資産が世間的にも新たな経済圏として一般化しつつある中、この成長の背景にあったDAO(自律分散組織)という概念が改めて注目を集めているため、改めてまとめようと思います。
DAO(自律分散組織)の代表的なプロジェクト
「DAO(自律分散組織)とは何か」を記す前に代表的なDAOのプロジェクト例を紹介します。
SushiSwap(スシスワップ)
スシスワップ(SushiSwap)は、完全に不特定多数の開発者コミュニティによって運営されているDEX(分散型取引所)です。2020年8月にイーサリアム上で取引高首位の分散型取引所ユニスワップ(Uniswap9のコアコードをコピーしてローンチされ、TVL(プラットフォームにロックされているアセットの時価総額)は33億6000万ドルを超え、イーサリアム上のDEXでも常に上位に位置している巨大プロジェクトです。
同じDAOのUniswapは明確な雇用関係にあるコアチームを保有していますが、SushiSwapは完全に不特定多数の開発者コミュニティで運営されています。言い換えるならば、一部開発等に関してクローズドなUniswapと運営や開発に関する議論が完全にオープンなSushiSwapとの違いで、スタートからDAOであったSushiSwapと徐々にDAOに移行しようとしているUniswapの組織としての在り方の大きな違いです。
Yearn Finance(ヤーンファイナンス)
ヤーンファイナンス(Yearn Finance)は、「yVault」を主力プロダクトとしたアグリゲータープロトコルです。「yVault」は専門家が資金運用手段を提案して、採用されたらスマートコントラクトとして公開されます。ユーザーはDeFiの高度な戦略の知識がなくとも専門家が考案した運用手段をプロトコルを通して利用して収益を得られます。TVLは20億ドルでSushiSwap同様にイーサリアム上のDeFiプロジェクトでは上位に位置します。さらに、上場企業と同様に下記のような財務レポートも出しています。
Yearn Financeは、創設者でありコア開発者であるアンドレ・クロニエ(Andre Cronje)氏とYearnのコミュニティにより運営されています。このコミュニティが非常に強力でSushiSwapなどの数多くのDeFiプロトコルとパートナーシップを結んだり、次々と新機能をローンチすることで注目を集めたDAOです。SushiSwap同様、初期段階からDAOとしてコミュニティでの運営がなされていました。
DAO(自律分散組織)」とは何なのか?
まだ、DAOには明確な定義が存在するわけではありません。一般的な共通認識としてのDAOは「特定の人に法帰属せず、不特定多数のメンバーがガバナンストークン(議決権)を通じて管理している組織」です。ただ上記ですと少しイメージがしにくいので馴染み深い「株式会社」と比較して考えます。
①株主・代表・役員・従業員という概念がない
ご存知の通り、株式会社では所有している製品やサービスを提供して収益を得て対価として各メンバーに給与が支払われます。また、得た収益の投資先や方針は株主や代表、役員や財務担当での合意のもと意思決定され施行されます。
DAO(自立分散組織)では、ガバナンストークン保有者が資金の投資先・方針・還元など細部にわたる意思決定を投票にて決定しています。スマートコントラクトを通して制御もされているため、誰でも検証ができ非常に透明性の高い組織体系となっています。一方で、ガバナンストークン保有者の投票によって方針が決まるため全体の反対を押し切っての戦略的判断等がとれない可能性が高いです。
②固定費が掛からない
上記に付随して、基本的にDAOにおいては終身雇用や正社員などの概念がなくスポットで業務を依頼し報酬をわたす場合がほとんどです。そのため既存の株式会社のような固定費がかからない組織体系となっています。
③グローバルに提案を受付できる
プロダクトに対しての提案に関して、株式会社の場合は社内のメンバーもしくは外部顧問や連携企業からの改善案などが出ます。一方で、DAOに関してはコミュニティが活発な場合は世界中の不特定多数のメンバーから改善案などを収集することが可能です。
不特定多数のコミュニティメンバーで運営されている組織ですので、カスタマーサポート、メディアと交渉してのマーケティング、規制当局との対応などの複雑で長期的なプロダクトを運営するのが難しい可能性が高いです。
まとめ
DAO(自立分散組織)について解説してきました。DAOはシンプルなオペレーションにより、グローバルな市場でスケールするようなプロダクトに関しては非常に親和性の高い組織体系でありそうです。一方でDAOもこれから多く誕生していくことで、組織様式も変わっていく可能性があります。
さらに、既に米国のワイオミング州での「DAO法」が施行される予定もありこれからの法規制なども変わっていく可能性があります。DAOはまだまだ進化途中の組織体系なので、これからも注目していく必要がありそうです。
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