SECのビットコインとイーサリアム以外の暗号資産カストディの方針、規制作りの上手さ
米証券取引委員会(SEC)は2020年12月、証券取引法規則のデジタル資産証券への適用のために、デジタル資産証券のカストディに関する新しいガイドラインを発表しました。
SECが定義するデジタル資産証券とは、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)で販売されたトークンやその他の暗号資産を含み、現時点ではビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)だけがコモディティで、その他の暗号資産はデジタル資産証券に含まれます。
SECによる暗号資産カストディの方針発表
今回、SECは新しいガイドラインでデジタル資産証券を取り扱うブローカー・ディーラーに対し、それらの会社が一定の条件を満たしている場合には今後5年間SECの執行措置の対象としない見解を示しています。今回のガイドラインは暫定ガイドラインのようなもので、これまでデジタル資産証券のカストディに関する明確な方針がなかったため、その骨子になるようなものとしています。今後5年間に執行措置の対象にならないようにする場合、企業は以下の条件を満たす必要があります。
- ブローカーおよびディーラーがデジタル資産証券にアクセスし管理するためにブロックチェーン上でそれらを転送する機能を持っている
- ブローカーおよびディーラーはビジネスの範囲をデジタル資産証券の取引・保管に限定している
- ブローカーおよびディーラーは取り扱うデジタル資産証券に関して、有効な登録明細書に基づいて募集・販売されるものか、また連邦証券法を遵守しているかを分析し、書面化している
- ブローカーおよびディーラーは保管しているデジタル資産証券へのアクセスに必要な秘密鍵の盗難や紛失を防ぐために業界のベストプラクティスと一致する合理的に設計されたポリシーを確立し実施している。具体的には、ブローカー・ディーラーは顧客にリスクを開示し、リスクを軽減するために合理的に設計された方針と手順を実施しなければならないとし、ハードフォーク、51%攻撃、盗難、鍵の不正使用などの可能性を考慮した緊急時対応計画の文書化を求める
- ブローカーおよびディーラーは証券取引法の顧客保護規則に基づいてデジタル資産証券を管理しており、デジタル資産証券の取引に含まれる潜在的なリスクについて事前に顧客に説明している
なおSECによる5年間の執行猶予期間の策定の目的は、事業者と当局がデジタル資産証券の保有または管理を実証する能力を強化するためのプロセスを開発する機会を作るためであると述べられています。
アメリカの規制作りの上手さ
SECによるビットコインとイーサリアム以外の暗号資産カストディの方針発表は、アメリカの規制作りの上手さを表しているように見えます。
今回の方針発表は緩やかな方針であって明確な規制ではありません。暗号資産は新しい分野なので産業が発展している段階で、即時に明確な規制をひくことは困難です。早くに規制をひくことで、後にその規制が足かせになってイノベーションが起きにくくなることもありえます。これは2017年に世界に先駆けて暗号資産規制を施行した日本の状況です。
しかし、今回の米国の方法は「最低限これだけは守りましょう」というルールを暫定で5年に定めました。成長産業に向き合う規制の作り方として特に日本は大いに学べる点があるのではないでしょうか。
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